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2009年6月21日 (日)

理(スジ)と情

Dsc02141 (庭のあじさい)

(岩には理がある

 司馬遼太郎氏の「この国のかたち」に「岩には理(スジ)がある」という言葉がある。前の戦争に負け、満州(中国東北部)にいた日本の兵士は強制的にシベリアに抑留された。極寒のシベリアで、食も十分でない生活に岩穴堀で苦しんだ人たちである。呉服屋にいた兵士はある人から岩には理があるから、その理を見つけ鑿(のみ)をあて掘れば効率よく掘れると教えられた。彼はその理を見つけ岩穴を掘り、ノルマを達成して日本に帰ってきた物語である。戦争中岩穴掘りを経験したことのある私は強い印象となった。中小企業経営も同じではないか。理を見つけ理に従って掘り進めれば生き残れる筈だと思った。以来この言葉を大切にしている。

 さて、経営方式を在来線から新幹線に変えるのも一つの選択である。投資信託にもいろいろのものがあり巨大化した。巨大化した株式投資信託は配当を高めるため「ものいう株主」になった。このためもあり、多くの企業が利益を優先させる考えをとり、日本人の元来もっていた人を大切にし社会を大切にする考えを忘失させた。とみに発すればまずしぼむ。アメリカ型の「株主最優先」「社員はコスト」の考えは見直されつつある。

 NHKTVクローズアップ現代、「人に優しい企業」が放映された。6月16日で私も見ていた。不況にも首切りなしの企業がある。その中の一つ長野県伊那市の食品メーカーは、「急成長は敵」を社訓として、48年間増収増益を達成した。利益を公共施設の建設など地域貢献に充てる姿勢に共鳴、全国から優秀な人材が集まる。これはあるべきコミュニティの実践である。ただ只管人材を養い、好況にも不況にも一定のリズムで、ひたすら研究し世間に役立っている。この形は在来線の列車で走る姿である。

(理を優先し情を添える)

 森脇兄から手紙をもらった。先日行われた分隊会関係のことと、「第58回日の会展」と「森脇ヒデ展、檮(とう)」の個展の案内である。日の会展は岡本先生を中心とする同好会の方々の出展である。場所が鎌倉であることから早速に見学に出かけた。多数の作品の中で森脇兄の作品はどこだろうと探す。見学者はまだ多くはなかったので家内と話す私の言葉が当日の当番の方の耳に入ったらしい。作品の展示場所を教えてくれる。勿論同好会の方で、絵について詳しい。私たち二人は作品「檮」の前に腰かけ見ていたが、何かしらこの絵は私に迫るものがある。私も植物は好きだが、この木は古い大木である。上に青い葉はない。しかし絵の白い部分に耳を当てたら吸い上げる水の音が聞こえるのではないかと思うし、生き抜くパワーを訴えてくる。得難い感動の時間であった。家に帰って個展案内で貰った写真をよく見る。こちらは訴え方が正面から来ている。大木の根っこの檮は生きようとする生命力を感ずる。絵は理屈をこえたパワーを訴えるが、この項冒頭の(理を優先し情を添える)は経営の神様松下幸之助氏の言葉であり、世の中は情を忘れては通らないことを教えてくれる。

                           松井義近

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