明日の小売業態
(スーパーマーケット)
小売業は生活者の購買行動の最初の段階で一番に選ばれること(ファーストチョイス)を目標に進む。このために業態作り重点三項目“情緒的顧客満足・生活役割別専業化・構造的に付加価値を”を推進する。業態変化については以前より小売商業の仮設を書いてきた。今回はこれらに付け加えて考えて見たい。
(類型1)物販店、商売の原点である“顧客”と“商品”を結びつける。
従来の物を中心とする専門化である。中心になるもっとも強い商品を作らねばならない。工場では技術を研究し、最新の製品を作ることができる。しかし商品が何で出来ているか、またその働きを明らかにしただけでは売れない。多くの創業者が苦労するところである。
(類型2)百貨店、専門店、買う人の欲求を中心とした情緒的顧客満足。
「顧客の生活に果たす役割」に該当する部分である。マズローは欲求の段階説で生理・安全・親和・尊敬・自己実現の5段階の内容を示した。これは多くの人に受け入れられている。顧客関係ではコンビニエンス・クリーン・カムフォタブル・キャラクター・カルチャーの5Cで示すことができる。販売上のキーワードは便利・自然・快適・個性・心が豊かであり、何れも物でないソフトになっているところが大切である。小売業は消費者・生活者に直接向き合っており顧客のこのニーズ・欲求にこたえねばならない。
戦後間もなく百貨店は人々に魅力を与えてきた。提供するファッション性は大切であるが、高級化して、関連する固定費は上昇した。最近10月の高級ブランド各社の売上げは、前年比10~25%下落したと新聞に報じられている。高級ブランドが一斉に大幅値下げするのは異例のことである。
(類型3)生活役割別専業化
専業とは専ら一つの仕事を業とすることである。この仕事をここでは“生活”を選んだ。主力が物別の専門化と区別する必要があった。生活には主力が普段(ケ)の生活用と、好みに応じられる業態とある。役割は中身を分けた場合テーマ等も含める。
(3-1)量販化、基本的豊かさ対応業態
昭和30年代にセルフサービス等を武器とするスーパーマーケットが生まれた。一人当たり持てる売り場面積の増大は、労働生産性を上昇させ、大量仕入れと共に価格の安さを強調出来るようになった。顧客には関連買いもできるように、より多くの品揃えをするほど便利であり、商売も有利となる。食品中心のスーパーは総合スーパーいわゆる量販店になり、専門のマーチャンダイザーを置いたが扱うものは必需的日用使用のものであった。ここでも店舗の大型化が進み、いくら郊外でも固定資本は増大していった。
スーパーはまとめて買えば安くなるやり方である。しかし時代は高齢化している。特に75歳以上の単身者は05年197万人から、30年には429万人に急増し3人に一人が“独居老後”を過ごすという。顧客アンケートからも「まとめて買えば安くなるのはわかる、けれど捨てる物が多いのはもったいないです」と意見が出る。
先日ハワイ島へいった。夕方地元スーパーへ寄った。平台の生鮮売り場には秤がおいてある。必要なだけおとり下さいということである。値段の表示はグラム単位である。
(3-2)嗜好専門化、個性的豊かさ対応業態
今の顧客は好み(価値観)が多様化し、自分の好みに合わないものは買わない。また地域による特徴付けも意識的に加えられている。中小企業はすべてを品揃えできないのが一般である。そこで生活テーマ別に絞りこんでゆく。例えば某社は「磯の風味とみやびなぬくもり・・」を好む人にしぼりこんで行く。 SPA(自社ブランド衣料品を売る直営店)もこれに合う客の集客に細かい心配りをしている。
(類型4)小型システム化、連携、能力・資源の統合
コンビニエンスストアの普及は大規模小売店舗法で大型店の出店が規制された影響もある。スーパーよりも小型で、よりお客に近づき、普段の生活に必要な頻度の高い商品を揃えて、顧客に便利さを提供した。商品の種類から見たら昔の万屋である。しかし商品管理等ITの導入により近代化し、小さい個店、システムの集中等小型でも行ける小売が出来上がった。分業とチエン化の一つのモデルと言える。これは電気小売業でも販売・仕入れ分業化が実施されている。
自動車の普及から郊外型ショッピングセンターが数多く作られた。しかし今や、高齢者人口の増加や環境・エネルギー問題、都会での冷たい空気等が生じ、対応できる地域コミュニティを中心にまとめてゆかねばならなくなった。小型なら個別対応もし易いし、こま目にムダの対処ができる。これは日本人のストレングスである。商品も地元資源を活用し、こだわるところがそこの生活にあう。現在の都会生活から次の世紀に進んできた。組織的には「人は使命を共有し、情熱を持って共に働くとき、最大の成果を上げる」とドラッカーが言われた言葉が哲理といえよう。
(類型5)再構築化、原点復帰の経営
再構築は損益分岐点の引き下げから始める。現在の成熟社会は前例に乏しい。不景気になり金融が麻痺し経済が行き詰まってしまったが、極端な金融資本主義をグローバル化した前例はないのではないか。消費者・生活者のライフスタイルも変わっている。これらの把握が原点であり、新しいビジョンによる経営再構築を迫られている。消費者の変化が分かる「顔が見える対応」を原点とし、顧客に夢を与える「明日の生活を売る事業経営」を進めねばならない。 松井義近
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