客は誰か
昭和32年4月、初めて中小企業診断員に登録して暫くたつと、流通革命論が華やかになった。当時、東大の林周二先生から問屋無用論や大型スーパーの予測に魅せられて熱心に話をきていた。問屋はなくなっても問屋機能はなくならないだろうと仲間と話したが、スーパーマーケットは全国にいくつ出来るだろうかと、映画館の数と比較してみたりしていたものである。スーパーは間もなくチエン化し、売れ筋の大量仕入れ大量販売の威力を発揮するようになった。セルフサービスによる一人当たり持つ売り場面積は労働生産性の向上に大きく寄与したのである。
当時から問題として研究対象としたのは生鮮食品である。 野菜や鮮魚をまとめて買っても、市場の値段は安くならなかった。そこで野菜は契約栽培となり、安定した値段で均一した商品を仕入れる分野が大きくなった。国内で安く仕入れられないで、海外市場で仕入れて、安定性を維持してきた。しかし最近農薬の混入等、品質の安定が図れないで顧客から疑問を投げかけられている。
日経ビジネスの08.3.10号に「個店主義が効率を生む」が載っている。紹介された内容は鮮魚を中心としたものであるが、現場の目で店舗ごとに違う顧客ニーズをうまく吸い上げている。一駅先の店舗でも売れる商品は微妙に違う。顧客に合った品ぞろえは口で言うほど簡単ではないが、それに合わせた品揃えは売上に貢献し、売れ残りを防いでいるのである。ドラッカーは「顧客は誰か」を重視し、これを検討することから大きな成果を生んだと述べている。店の立地による顧客をよく知り、それに合わせた経営が出発点である。
「オオゼキ」の鮮魚仕入等における個店主義を、店ごとの商品仕入れの具体例でみる。
「御嶽山店」は田園調布といった住宅地の客も多く、近隣には高齢者も多い。高齢者向き刺身2点盛りは980円で多少高いが質がいいもの、家族向けに刺身6点盛り1,780円、手巻き寿司セット1,280円が陳列されている。
「雪が谷店」は商圏に単身者が多い。盛る数量は少なく、ボリュウムは多く値段も安く398円の刺身がある。
「松原店」は恵比寿や渋谷の飲食店が業務用の食材を買い求める。魚一匹まとめて売る。
「練馬店」の客は安い時にまとめて買う人があり、冷凍品も多いという。
このような個店の事例がみられ、「オオゼキ」全体の営業利益率は7.3%とよい。鮮魚の会社全体に占める比率が分からないが、鮮魚部門の貢献は高いと思う。
一般食品については「高井戸店」の事例があり、4,000種類の加工食品があるという。品目分類で4,000品目ではないかと思うが?。特に注目されるのは、「顧客の嗜好」に合う陳列棚を設けていること。ということは複数問屋から仕入れているものと思うし、一般食品の管理は別にやっていると思われる。「オオゼキ」全体の商品回転期間は3.9日。勿論一日の就業後の在庫であり、ロス管理をしていれば在庫は売価でやっているのが一般的である。それを考慮しても素晴らしい。
以上特質は鮮魚部門が強いこと。ということは鮮魚担当者が強いのである。「顧客は誰か」を明確にして、そのニーズに合わせていけば、チエン化していない個店主義の店でも十分対応できる事例である。
松井義近
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