創業社長の心
中小企業の診断支援にゆくと、診断士は内部の特質と外部の条件を調べる。いわゆるSWOT分析である。ストレングス(Strength)自社の強み、ウイークネス(Weakness)自社の弱み、オポチュニティ(Opportunity)市場・顧客の機会、スレット(Threat)外部の脅威である。これは中小企業診断士なら誰でもやっている。現状はどうなのかと共に、経営者が最も強く考えていることを受け止めねばならない。
UF社においても自社の強みともいうべきストレングスを掘り下げておくことが大切であった。創業社長自作の「心と心」であり、これが経営理念の中心である。
「私たちの料理は調理人の心です。料理を届ける人はサービスが心です。
お客様の心に、心と心を納めて、初めて真心になります。
心と心の結びつきを深めみんなで幸せになろう。物も心も豊かになろう!」
江戸時代からの老舗に固く守られている家訓がある。それらの言葉は重みがある。だから元の言葉を大切にする。しかし社員がハッキリ理解するために、わかりやすい解釈文を作ることがある。この流儀で書くと「心をこめて作った料理、心をこめたお届け等のサービス、お客様の心の満足に、私たちの心をこめれば真心を尽くすことになる。心の結びつきを深めみんなで幸せになろう。物も心も豊かになろう」。万葉集ではないが勝手解釈になることを恐れる。
この精神を元にトップ3人と共に創ったのが社是であり、「感謝・奉仕、信念・絆、努力・精進」とその説明文ができた。この会社の事務所に入ると正面に「心と心」を中心に右に「社是」左に「事業コンセプト」が掲げられている。額の台紙はなんと真っ赤な赤色である。赤は燃える心を表しているのであろう。社是の第3は「努力・精進」である。創業時は金もない。料理を配達する車もない。一緒に創業した3人が何時間もかかるところから車を貰って運転してきた。冬の寒い時の夜である。暖房もない。今でも語り草になっていることを前にふれた。一般のお客はいない。一軒一軒開拓せねばならない。料理を作ることも同様だ。社長は言われる。「後一歩、もう半歩の頑張りを」と。もう1軒、あと半歩の頑張り、これが利益であるといわれる。
商品は昼の定食や弁当が主体である。準備は前日からやっても、当日4時半に来て準備を続け盛り付けもしなければならない時が多い。社長は工場に入って煮たり揚げたりはしない。けれど冬の寒い日も事務所に来ている。これが社長の心であり、社員との絆で結ばれた相手の痛みが分かる人であったと思う。今後このストレングス眞心をいかに強く形に表すかが大きな課題と思う。顧客も働く人もそれぞれ欲求を持ち、心がある。給料・価格や安全は基礎的な問題でやらねばならない。その上に協力や喜び、それぞれの自己実現があり、事業としての「顧客満足=サービスの積み重ね+商品」を普段の地道な努力・精進で築き上げねばならない。ここにみんなの幸せを願って頑張ってきた創業社長の心がある。
松井義近
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